信託財産とその他の財産

信託できる財産

身近な街の法律家 行政書士の任田です。

前回では”家族信託とは?”をテーマに記載を致しました。
そこで今回は信託財産について少し深掘りしていこうと思います。

 では前回と少し重複しますが、まず信託できる主な財産を見ていきましょう。

・金銭
・不動産
・動産
・債権
・自社株
・有価証券
・特許権
・海外の資産


このラインナップを見ると、金銭と不動産(自宅や土地)はわかりやすいですが、債券とか特許権などは
知らないとわからないですよね・・・。

 信託法上、信託するものは財産と規定されていて、財産的な価値があり金銭評価ができる積極財産であれば信託が可能
反対に債務(ローンや保証債務)などの消極財産は信託できません。

不動産の例外として「農地」と「借地権があります。

 「農地」に関しては、農地法での規制があり、登記簿上の地目が農地である場合は、信託することができません。
 
そのため、信託をするには農地転用をしていく必要があります。

 「借地権」に関しては、借地権自体が金銭評価できる信託財産のため、信託契約をすることはできますが、民法612条の規定により
 借地権を譲渡するには、賃貸人(地主)の承諾が必要になります。
 
信託契約が譲渡にあたるかどうかは、現状正式な見解が出ていないため、事前の承諾を得ておくのが無難だと思います。

信託財産の手続き

 では次からは、主な信託財産についての手続きを見ていきましょう。

通常、信託を行った場合に財産の名義は形式的に受託者に変更します。

その場合において、信託法34条により受託者は自分の財産と信託された財産を別々に管理しなければなりません。

そのためそれぞれの財産が信託財産であることがわかるように、信託による名義変更手続きが必要となります。

ここで1つポイントですが、名義変更手続きをしたとしても、実際に権利を有するのは受託者ではなく、受益者になります。

⇒詳しくは、前回のブログをこちらからご覧ください。

① 不動産

 左の信託不動産の記載例を見て頂くと、受託者(磯野カツオ)への所有権移転と信託登記がされていることがわかります。
民法では名義人が権利を持つため、所有者と名義人が一致します。家族信託においては、贈与税などの課税関係を生じさせないようにするので、当初の所有者である磯野浪平に財産的な権利(受益権)を持たせることとなります。そのため信託目録が信託登記と同時に作成され、左の信託目録にある委託者が磯野波平、受託者が磯野カツオ、受益者が磯野波平と登記されています。

今回の家族信託では、受益権が磯野波平から移動をしていないので、贈与税、不動産取得税、譲渡所得税などの税金は発生しません。(*信託登記手続きでの登録免許税は発生します。)

次に4.信託条項を見てください。
ここには信託の目的、管理方法、終了事由、その他の信託条項と事細かに登記されます。

また、その他の信託条項3の「信託が終了した場合に磯野カツオに帰属する」というのがポイントで、家族信託の設計により生前の財産管理から相続後の資産継承機能まで有する、検討するには充分な仕組みではないでしょうか。


② 金銭

 金銭について注意が必要なのは、委託者のままの預貯金口座ではあくまで名義人が委託者であるため、受託者が入出金や振込などの手続きをすることができません。

ではどうするのか?ということですが、受託者の銀行印で届出をして、受託者名義の信託口口座を開設していきます。

口座を開設すればいいのではなく、信託財産として「金○○○万円」と特定し、委託者の口座から引出しなどをした後に、信託口口座に信託契約で定めた金銭を入金することで受託者個人の預金口座と委託者から信託を受けた金銭を分別管理することになります。

信託契約後の金銭や信託不動産からの家賃収入、経費の支払いなどは信託口口座で管理を行うことにより、受託者がスムーズに手続きをとることができるようになります。

③ 上場会社の株式、投資信託等

 上場会社の株式、投資信託等も信託財産とすることができるのですが、証券会社での信託口口座の開設の普及が間に合っていないのが現状で、金銭に変換して信託財産とするか、信託財産に入れずに代理人として運用するなどしているのが多いようです。

一部の証券会社では開設できるようですので、お問い合わせしてみてもいいかと思います。

④ 自社株式(非上場株式)

 法人の経営者の方で、所有している自社株式を信託財産に組み入れたいというのは、家族信託が活躍できる見せ場です。

通常の株式譲渡の手続きと同様に、自社株式を信託財産とする信託契約と会社での株主名簿書換手続き、法人税別表2の変更を経て信託財産にすることができます。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。
信託する財産の種類、手続きなどをご紹介しましたが、遺言や生前贈与とは違う仕組みですので家族信託がベストな選択になるというご家庭もあると思います。

もちろん遺言や贈与などあらゆる方向から検討して答えを出していくことが必要です。

どうするのがいいのか、なかなか判断が難しいところですのでそんな時は、相続の専門家に相談してみてください。

⇒当事務所のホームページはこちら

 今回もとうだ行政書士事務所のブログを最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。 では。




 

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