遺言書で財産分与がなかったら!? ”遺留分侵害額請求”

遺留分侵害額請求権

 身近な街の法律家 行政書士の任田です。
今回は、もし残された遺言書に相続人である自分に財産分与がなかったらというテーマで記載していこうと思います。
例えば、「前妻との間に子供がいるが、遺言書で後妻にすべての相続財産を相続させる」「遺言書で相続人でない人に全額遺贈する」などといった場合です。
実際、数年前に紀州のドン・ファンの「市へ全額寄付する」という遺言書でメディアに取り上げられたことは皆さんの記憶に新しいことだと思います。
このように遺言書で財産分与が指定された場合、泣き寝入りしかないのでしょうか?
もちろん、遺言書の内容を同意する場合はダメですが、全額ではないにせよ取り戻す手段はあります。

それが、今から説明する【遺留分侵害額請求権】(民法1046条)です!!

この権利は、生前贈与や遺贈、遺言により遺留分を侵害された場合、相続人は遺留分を限度に財産の返還を求めることができます。

それで実際のところ、どのくらい返還を求められるかというと
遺留分は、「法定相続割合の1/2または1/3」と定められています。 遺留分の割合は、「相続人が直系尊属のみ」の場合は法定相続割合の1/3となり、それ以外の場合は1/2です。 そのため、相続人が「配偶者と直系尊属」の場合と「直系尊属のみ」の場合で、直系尊属の遺留分の割合が異なります。ちなみに被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありませんので、お気をつけください。

具体的に計算すると、例えば相続財産が3000万円あり、配偶者、子供2人とします。
この場合、法定相続分は、配偶者が1/2の1500万円、子供2人はそれぞれ1/4の750万円になります。
遺留分はこの法定相続分にさらに1/2の割合で計算しますので、配偶者が750万円、子供2人はそれぞれ375万円となります。
つまりこの金額が遺留分として請求できる金額となります。

遺留分侵害額請求はどうやるの?

 この遺留分侵害額請求は、相手に意思表示をすることにより効力が発生します。このため、相手に確実に知らせないと「知りません」といったトラブルにもなりますので、内容証明郵便を使われるのがいいかと思います。
また気を付けなければならないのは時効です。
遺留分侵害額請求権の時効は、「相続の開始および遺留分を侵害する贈与等のあったことを知ったときから1年、または相続開始から10年になります。」
以外と時効が短いので、速やかに請求しておきましょう。

 先ほど簡単に遺留分の計算例を出しましたが、実は遺留分を計算する際の遺産額は、通常の相続財産とは異なります。

遺留分侵害額請求の対象となるのは以下のような財産です。

  • 遺言によって受け取った財産
  • 相続開始前1年以内に贈与された財産
  • 1年より前でも当事者が遺留分を侵害すると知りながら(悪意を持って)行った贈与
  • 相続人が受けた特別受益(相続人へ相続開始前10年以内に贈与された財産)

以上の財産を全て合算し、債務を控除した額をもとに、遺留分を計算していくことになります。


相手が遺留分侵害額請求に応じなかったら?

 さて、なんとか請求まではしたけど、相手から連絡もなければ応答もない場合はどうするの?という話になりますが
この場合は、家庭裁判所にいずれかの調停を申し立てることができます。

相手が特定遺贈、全部包括遺贈の場合は「遺留分侵害額請求調停

割合的包括遺贈、相続分の指定などは「遺産分割調停

 申立人は遺留分権利者などで、申立先は相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所になります。
この調停でも、合意できない場合は次に、遺留分侵害額請求訴訟を進めます。
遺留分侵害額請求訴訟は家庭裁判所ではなく、地方裁判所や簡易裁判所に提起していくことになります。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?遺言書もあればいいってわけではなく、残された家族が裁判などにならないように配慮して、残すことも大切だと思います。そこまで気がまわらなかったなんてことがないよう、遺言書を作成するにしても深く検討されてはいかがでしょうか?我々、行政書士は相続・遺言書作成の専門家です。今回記載した内容証明郵便も作成できますので、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

⇒当事務所のホームページはこちら

 今回もとうだ行政書士事務所のブログを最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。では!!




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