障がいを持つ子供への相続対策

 身近な街の法律家 行政書士の任田です。
今回は、障がいを持つ子供の親御さんの相続に関して記載していこうと思います。

「将来、私にもしものことがあったらこの子はどうすればいいんだろう」
「いまある財産をどのように相続させればいいの?」

このようなお悩みは、きっと尽きないと思います。
今後の対策の1つの案として、ぜひご覧ください。

遺言と成年後見制度で対応できる!?

 まず見出しの答えはNoです。 
通常の相続ですと、遺言や成年後見制度を検討することになるかと思います。
ただ遺言である程度相続財産を障がいを持つ子供にわけたとしても、
相続財産に賃貸アパートなどの不動産がある場合はその財産の運用が難しい、
自宅を相続しても自宅の処分が難しいなどの問題が起こってきます。

その他にも下の事例で、
長女が長男の面倒を見ると言っても長女にも家族があり、
お婿さんやお孫さんをあてにしてもよいか不安にはなりますよね。

また実際に相続が発生したときには判断能力に乏しい遺族がいると、
遺産分割協議が簡単には進めなくなってしまいます。

これは障がいを持つ子どもが判断能力が乏しい場合には印を押せないため、
代理人として成年後見人を立てる必要があるからです。

成年後見人は、身辺監護や日常生活の支払いなどの財産管理を担うため、
自宅の処分や資産の運用などができないのです。

 【事例】


母親(70代)には、長男(50代)、長女(50代)の2人の子供がおり夫はすでに他界。
長男には精神的な障がいがあり、母親と2人で居住。
長女は結婚しており、隣県に夫と2人の子供の4人で居住。長女は長男の世話をするつもり。

財産は自宅(土地・建物ともに所有)の他に、収益不動産として賃貸アパートを2棟運用し、定期収入あり。
預貯金は約4000万。

【母親の願い】
・自分は長男の世話をするのが困難になったら、介護施設に入所して余生をおくりたい

・自宅については、将来的には売却希望

・長男の世話や財産の管理は、長女にお願いしたい

・長女が長男より先に死亡しても、長男の世話や財産管理が保証されるようにしたい

・長男が死亡して残った財産は、長男の世話をしてくれた人たちに寄付したい

母親の願いを叶える答えとは?

 さて、この母親の希望を叶えるために選択する1つの案として家族信託が考えられます。

⇒家族信託の基本的な考え方はこちらの過去ブログで

今回の事例で考えていくと長女は長男の世話をするつもりですので、
信頼できる長女と家族信託を組むことにより、
賃貸アパートと預貯金の管理を柔軟に運用することができます。

また、母親が亡くなったときも信託された財産は
相続手続きが不要になるのも大きなメリットといえます。

遺言書では相続先は1代しか指定できませんが、
長女が先になくなった場合でも家族信託であれば複数先の指定ができるので
母親の願いである、長男の世話をしてくれた人や施設に対して寄付をすることが可能です。

さらにこの家族信託と併用して、成年後見制度を活用する仕組みを使っていきます。
まずは母親と第3者(士業が望ましい)を家庭裁判所へ法定後見人選任申し立てをします。
これにより、母親が急病や急死になっても、長男が困らない体制を作ることができます。

その後、母親が他界しても第3者の法定後見人が引き続き身辺監護や財産管理をするので、
長女と共に長男のバックアップ体制が整うのです。

【家族信託と成年後見制度を活用したサンプル例】

・母親と第3者を長男の成年後見人とする法定成年後見人選任申し立てをした上で、家族信託を締結

・母親を委託者、第一受益者、長女を受託者、長男を第2受益者と設定

・信託財産は金銭及び不動産とし、信託内容を母親が他界した後に
 収益不動産の家賃収入を第2受益者である長男に渡すよう設定することにより、
 長男の生活資金を確保する。

・自宅不動産を受託者(長女)の権限で売却できるよう設定

・遺言執行者を士業などに依頼する

まとめ

 いかがでしたでしょうか。
1つの案として託す道があると思っていただけると幸いです。
とはいえ、複雑な手続きでもありますので、
まずは不安を和らげるためにも専門家に相談していただければと思います。

当事務所のホームページはこちら

今回の事例では長女が協力的であるために成り立つ事例になっていますが、
拒否であったり、相続だけして世話をしない家族も少なくはありません。

その場合にも、後見人制度や信頼のおける福祉施設との連携により
何かいい手段を選択する道をご提案できる可能性があります。
家族だけでは思いつかないこともありますしね。

最後までブログをお読みいただきありがとうございました。
少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。では。


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