配偶者居住権とは?
残された配偶者が無償で居住できる権利
身近な街の法律家 行政書士の任田です。
今回は「配偶者居住権」についてわかりやすく解説していこうと思います。
私が相続の相談を受けている際によくこんな話を聞きます。
「息子に自宅を相続させると、追い出されるかもしれない」、「自宅を相続すると今後の生活費がなくなってしまう」
たしかに不安になりますよね。
ただ、こうした不安を解消するために、平成30年の民法改正で誕生したのが「配偶者居住権」です。
まずは配偶者居住権が定められている民法1028条1項を見てみましょう。
「被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、遺産分割、遺贈または死因贈与により、その建物の全部について無償で使用および収益をする権利を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りではない。」
ちょっとわかりにくいので要約しますと
「夫婦の一方が亡くなった場合に残された配偶者がそのまま無償で家に住むことができる権利」
となります。
これで少しは、ホッとされますよね。
では具体例をもとに次から解説していきます。
居住権と所有権を分離する仕組み
では例として、配偶者である夫が亡くなり、妻と息子(一人)で相続する場合で見てみましょう。
今回の場合、法定相続分は母と息子で2分の1づつ分けることになりますので、3000万円 + 1000万円 ÷ 2=2000万円づつ相続します。
ただ遺産は相続人の間で合意ができれば、どのように分けても問題はないので、母親に自宅、息子に預金1000万円で合意すれば終わりなのですが、例えば母親と息子の仲が相当悪く、息子が母親に「自宅を売却して、2000万円でしか納得できない!!」となったときは、母親も2000万円は手元に残りますが、新たに住む場所を探さなくてはなりません。
ですが高齢者で賃貸アパートやマンションを借りるのは審査も厳しくもあり、新たな土地で生活するのはとても大変なことです。
そうなるとやはり今まで住んでいた自宅にそのまま住みたいわけです。
そこで活躍するのが、配偶者居住権です!!
自宅の所有権を「配偶者居住権」と「その他の権利」に分けることができるのです。
仮に配偶者居住権の価値が1500万円で、その他の権利の価値も1500万円だとすると、母親は自宅に住むことができる権利
があればよいので、配偶者居住権 1500万円 + 預金の半分 500万円 を相続し、
息子は、その他の権利 1500万円 + 預金の半分 500万円 を相続すればどちらも2000万円づつの相続になります。
(*配偶者居住権の価値の算出は、税理士さんにお問い合わせ頂くと良いと思います。)
これでめでたく、自宅を追い出されることなく、終身で住み続けることができるようになります。
配偶者居住権の要件
配偶者居住権は配偶者なら誰でも取得できるのか?というと、そうではなく2つの要件があります。
では次にどのような場合に配偶者居住権が設定できるのかを見ていきましょう。
①配偶者が自宅に住んでいたこと
配偶者居住権は、元所有者に相続が発生した時点で、その自宅に住んでいた配偶者にだけ認められますので、別居をしていた夫婦の間では認められません。
②配偶者居住権の登記
配偶者居住権は、不動産の登記簿謄本に登記をしなければ効力を発揮することができません。遺産分割協議で配偶者居住権を相続することが決まっていても、登記をしないままにしていると、息子さんが勝手に自宅を売却してしまうということも・・・
まとめ
いかがでしたでしょうか。
配偶者居住権は、亡くなるまでの住まいを確保したい配偶者だけに認められている権利です。
今回の例の息子一人ではなく兄弟が多い場合で相続において自宅が大きな割合を占めて分割に困るような時もうまく
活用できるのではないでしょうか。
当事務所では配偶者居住権や相続についての相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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今回もとうだ行政書士事務所のブログを最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。では。